こんにちは。
2022年6月、日本のポテトチップスメーカー大手であるカルビーと湖池屋が相次いでポテトチップスをはじめとしたスナック菓子の値上げを発表しました。
両社とも、発表資料では値上げの理由を「エネルギーと原材料価格の高騰」と説明していますが、その詳細はどのようなものなのでしょうか。
今回は、2022年のポテトチップスの相次ぐ値上げの理由について考えてみたいと思います。
以下のような方は、本記事を参考にして下さい。
この記事はこんな方におすすめ
- ポテトチップスの相次ぐ値上げについて、詳細な理由を知りたい
- 値上げの詳細を知ることでポテトチップスが今後値下げする可能性があるかどうかについて知りたい
それでは記事本文へ移ります。
ポテトチップス値上げの状況
まずは、今回のポテトチップスの値上げの状況について、簡単に状況をおさらいします。
日本のポテトチップスメーカー大手であるカルビー株式会社と株式会社湖池屋は、それぞれ2022年5月10日と6月3日にポテトチップスを含む商品の値上げを発表しました。
[st-cmemo fontawesome=”fa-external-link” iconcolor=”#BDBDBD” bgcolor=”#fafafa” color=”#757575″ bordercolor=”” borderwidth=”” iconsize=””]価格改定に関するお知らせ ーカルビー株式会社より[/st-cmemo]
[st-cmemo fontawesome= “fa-external-link” iconcolor=”#BDBDBD” bgcolor=”#fafafa” color=”#757575″ bordercolor=”” borderwidth=”” iconsize=””]一部製品の価格・規格改定に関するお知らせ ー株式会社湖池屋より[/st-cmemo]
その内容を表にまとめると以下の通りとなります。
カルビー | 湖池屋 | |
値上げ対象商品 | じゃがポックル、じゃがピリカ、ポテトチップスクリスプ | KOIKEYA PRIDE POTATO、ジャガイモ心地、すっぱムーチョなど |
値上げ開始時期 | 2022年6月、7月 | 2022年9月より |
想定値上げ率 | 10~20%程度 | 4~9%程度 |
値上げ理由 | 原材料価格の大幅な上昇 | 原材料・配送費・人件費の高騰 |
両社とも、主に原材料価格などの大幅な上昇によって、10%前後、販売価格の値上げをするか内容量を減らさざるを得ない状態になっているようです。
値上げ時期も発表後3カ月以内ということで、状況はひっ迫しているように見受けられます。
ポテトチップス値上げの理由
状況を再確認したところで、本題である、ポテトチップス値上げの理由の詳細について分析していきたいと思います。
プレスリリースに記載されている内容と同じ部分もありますが、個人的にはポテトチップスの値上げには以下の3つの要素があると考えています。
[st-mybox title=”ポテトチップス値上げの理由” fontawesome=”fa-check-circle” color=”#757575″ bordercolor=”#BDBDBD” bgcolor=”#ffffff” borderwidth=”2″ borderradius=”5″ titleweight=”bold” fontsize=”” myclass=”st-mybox-class” margin=”25px 0 25px 0″]
1.原材料価格の高騰
2.エネルギーコストの高騰
3.メーカーごとの差別化が難しい
[/st-mybox]
順番に説明していきます。
原材料費の高騰
まずは原材料価格ですが、今更言うまでもないですが、ポテトチップスは主にジャガイモと食用油を原料としています。
そのジャガイモと食用油のどちらともが、現在大きく値上がりしてしまっている状況になります。
ジャガイモ価格の高騰
2022年5月のジャガイモの販売価格ですが、総務省統計局の統計によると1キロあたり521円であり、更に上昇傾向にあります。
[st-cmemo fontawesome=”fa-external-link” iconcolor=”#BDBDBD” bgcolor=”#fafafa” color=”#757575″ bordercolor=”” borderwidth=”” iconsize=””]「小売物価統計調査結果」(総務省統計局)[/st-cmemo]
2017年にはジャガイモ不足でポテトチップスがスーパーから消える「ポテチショック」が発生しましたが、その年でも最大1キロあたり467円でしたので、今の価格がいかに高いかお分かりかと思います。
高騰の理由としては、ジャガイモの一大産地である北海道での昨年の記録的な干ばつが影響し、昨年以来出荷量が減っていることが挙げられます。
また、ロシアが輸出していた肥料がロシアウクライナ情勢のためヨーロッパに輸出されなくなり、その余波で肥料価格が上がっていることも理由の一つです。
食用油の高騰
ポテトチップスを揚げる際、多くの場合には植物油の一種である「パーム油」や「ひまわり油」が使われますが、これらの油が値上がりしています。
ポテトチップスに使用する食用油については、以前こちらの記事でも詳細を紹介していますので、興味のある方はご覧ください。
パーム油はヤシの木から採取され、主にインドネシアで作られていますが、2019年のトンあたり約600ドルから2022年5月現在で約1700ドルと3倍近い価格になっています。
[st-cmemo fontawesome=”fa-external-link” iconcolor=”#BDBDBD” bgcolor=”#fafafa” color=”#757575″ bordercolor=”” borderwidth=”” iconsize=””]パーム油価格の推移 ー世界経済のネタ帳より[/st-cmemo]
その理由の一つとして、ロシアウクライナ情勢が挙げられます。
パーム油の代替となり得るひまわり油は、ロシアとウクライナでの生産が大部分を占めていて、その生産と輸出が現在の情勢から上手くいっておらず、パーム油の上昇に拍車をかける形となっています。
ジャガイモも食用油も高騰している中で、ポテトチップスメーカーとしては値下がりしている原料が無いような状態のようです。
エネルギーコストの高騰
次にエネルギーコストの高騰に関して説明していきます。
ポテトチップスの製造工程では、スライスしたジャガイモを熱で乾かしたり、油で揚げる工程がありますので、その際に燃料が必要になります。
また、原材料を工場へ輸送する際や、工場で出来上がった製品を消費地まで輸送する際にはトラックを使用しますが、その際にガソリンが必要になります。
その燃料やガソリンの価格が、昨今の原油価格の高騰と円安のダブルパンチで大きく上昇してしまっています。
原油価格の高騰
ガソリンや灯油、軽油など様々な燃料の元になる原油の価格ですが、コロナショックで大きく下がって以降は右肩上がりの上昇を続けています。
アメリカ産の原油価格の指標であるWTIは2022年6月時点でバレル当たり100ドルを超えていて、これは2014年以来、数年ぶりの高値です。
[st-cmemo fontawesome=”fa-external-link” iconcolor=”#BDBDBD” bgcolor=”#fafafa” color=”#757575″ bordercolor=”” borderwidth=”” iconsize=””]WTI原油価格の推移 ー世界経済のネタ帳より[/st-cmemo]
ここまで原油価格が大きく上昇している理由としては、コロナショックからの経済活動の再開に加え、またもロシアウクライナ情勢が影響しています。
ロシアは主要な原油産出国のため、ロシアの原油が輸出されないことによって供給がひっ迫すると予想され、価格が上昇しています。
その他の原油産出国(中東など)はその分供給を増やすことが出来ますが、原油が高い方が彼らも都合が良いため、増産には慎重な姿勢のようです。
また、例えば天然ガスや石炭など原油以外のエネルギーについても、原油の上昇につられて高騰する状況が続いています。
円安(輸入品の価格高騰)
先ほど、原油は2014年ぶりの高値とお話ししましたが、日本に住む人や企業にとっては2014年以上に燃料費の高騰を厳しく感じているはずです。
その理由として、今年に入ってから円安が20円以上進み、ドル円が136円と24年ぶりの円安になっていることが挙げられます。
[st-cmemo fontawesome=”fa-external-link” iconcolor=”#BDBDBD” bgcolor=”#fafafa” color=”#757575″ bordercolor=”” borderwidth=”” iconsize=””]USドル/円の為替レートの推移 ー世界経済のネタ帳より[/st-cmemo]
円安になるということは円の価値が下がっているということで、同じ量の原油を買うのにより沢山の円が必要になることを意味します。
つまり、ただでさえドルの価格が上がっている原油を、さらに今まで以上の円を支払って買わなければならない状態になっているということです。
これは原油だけでなく、主に海外からの輸入に頼っている前述の食用油についても同じことが当てはまります。
円安の理由として、日本とその他の国の財政政策の差、日本の産業構造の変化など様々な要因が組み合わさっていますが、短期的には円安の解消は期待薄かもしれません。
メーカーごとの差別化が難しい
最後の要因として、ポテトチップスはメーカーごとの差別化が難しいことも、今回の値上げの遠因だと考えています。
ポテトチップスは値下げ競争に陥りがち
ポテトチップスは大体どこの商品を食べてもそれなりに美味しいため、どうしても消費者は店頭で安い商品を買いがちになってしまいます。
そうすると、各社とも自社の商品を売るために値下げ合戦となり、最終的にポテトチップスメーカーの利益がほとんど残らない価格で売られることになります。
そのような中で今回のような事象が発生すると、メーカー側でコスト上昇を吸収することが難しく、値上げをせざるを得ない状況になるのだと思います。
こういったポテトチップスの差別化が難しい(=メーカーの利益が少ない)ことはメーカーも問題視しているようで、最近は各社とも独自路線の高級なポテトチップスの販売に力を注いでいます。
ポテトチップスに占める原材料価格と販売管理費は低くない
カルビーの2020年3月期決算によると、売上原価が約55%、販売管理費が約15%ということです。
この数字にはポテトチップス以外のスナックも含んでいると思いますので何とも言えませんが、ポテトチップスも大枠は外れていないと思います。
[st-cmemo fontawesome=”fa-external-link” iconcolor=”#BDBDBD” bgcolor=”#fafafa” color=”#757575″ bordercolor=”” borderwidth=”” iconsize=””]2020年3月期決算説明資料 ーカルビー株式会社より[/st-cmemo]
この売上原価にはポテトチップスの製造に使用した原料(ジャガイモと食用油)および燃料費、販売管理費には人件費のほかにトラックなどでの輸送費が含まれていると思われます。
今まで見てきた情報をもとにすると、売上原価・販売管理費ともに10%程度の上昇では済まず、値上げしたとは言え引き続きポテトチップスメーカーの利益は厳しいのではないでしょうか。
ポテトチップスの値下げの可能性は?
さて、いかがでしょうか。
2022年のポテトチップスの値上げの詳細な背景についてお分かり頂けたでしょうか。
原材料価格の高騰については、今後も異常気象や世界情勢の混乱がある限りはなかなか落ち着くことはなさそうです。
エネルギーコストについては、産油国の動向次第で徐々に原油価格が落ち着く可能性もありますが、円安も含めしばらくは予断を許さない状況です。
少なくとも当面の間は元の価格に戻るということは難しく、家計と相談しながらポテトチップスを楽しむのが現実的と言えそうです。
以上、「2022年のポテトチップスの相次ぐ値上げの理由について分析」でした!